イベント情報

2017.03.31(金)

教育CSRフォーラム2017報告書

次世代育成に取り組む企業によるキャリア教育プログラム開発推進コンソーシアム(事務局 株式会社キャリアリンク)は、2017年3月9日(木)に千代田区立麹町中学校において、『教育CSRフォーラム2017~「未来型の新しい学校」―「協育」がめざすもの~』を開催いたしました。本フォーラムは毎年、社会総がかりでの子どもたちの資質・能力育成を実現するために、学校と企業のあるべき連携の推進を考える場として、教育関係者、企業の教育支援担当者にお集まりいただいており、今回は150名を超える参加者を迎えることができました。

 

本フォーラムは二部構成で、第一部では、「社会に開かれた教育課程」に先駆けて取組む学校の事例として、千代田区立麹町中学校 工藤勇一校長より、麹町中学校の教育改革の実践についてご紹介いただきました。第二部では、株式会社日立製作所、パナソニック株式会社、大日本住友製薬株式会社のご担当者から、各社の教育支援活動のねらいや具体的なプログラムの事例紹介を通じ、企業による「資質・能力育成型」の次世代育成支援活動の意義について共有いただきました。

※一部の参加者には、スペシャルプログラムとして、未来の学びにおける理想の学校施設とも言える麹町中学校の校内見学および通常授業やアフタースクール授業を参観いただきました。

 

画像:授業参観風景

画像:授業参観風

≪メインプログラム≫

開催にあたってのメッセージ -「協育」がめざすもの

若江 眞紀(キャリア教育プログラム開発推進コンソーシアム 代表) 

若江 眞紀(キャリア教育プログラム開発推進コンソーシアム 代表)

本コンソーシアムは、今年で設立12年になります。
当初、3件のプログラムでスタートしたキャリア教育支援ですが、今では40を超えるプログラムを全国にお届けしています。
今、日本の教育が大きく変わろうとしています。本日は、その変革に先んじて挑戦する麹町中学校を舞台に、「未来型の新しい学校」の取り組みや先進的な企業のプログラム実践事例に触れていただき、教育変革への理解と行動推進につながることを願っています。

第一部「社会に開かれた教育課程」の姿‐麹町中学校の挑戦

工藤 勇一 氏(千代田区立麹町中学校 校長)

工藤 勇一 氏(千代田区立麹町中学校 校長)

【麹町中学校の取組 改革・改善の3年間】

学校は社会人になるための準備期間であり人材育成の場として、学校は、子供たちが社会や大人に希望を持てる場所でなければならないという考えから、学校のあるべき姿をめざし、3年前の赴任以来改革・改善にチャレンジしてきました。改善項目としてあげた数は500、改善できた数は現在350を超えました。
主に、1.目標を改善する、2.手段を改善することを中核とし、徹底してすべての教育活動や学校経営のあり方を見直してきました。

【目標の改善】

目標の改善とは、何をめざすのかを明確にすることです。めざすものが明確でないと学校はバラバラになってしまいます。本校では、生徒にその後の人生で繰り返し再現できる力をつけることを、最終目標として設定しました。知識を習得させるだけではなく、そのためのスキル‐ルーティン‐を大事にしたいと考え、OECDのキー・コンピテンシーを基に社会に近い目標を作成しています:

≪1.言語や情報を使いこなす能力≫
1.様々な場面で言葉や技能を使いこなす
2.信頼できる知識や情報を収集し、有効に活用する
≪2.自律的に活動できる能力≫
3.感情をコントロールする
4.見通しをもって計画的に行動する
5.ルールを踏まえて建設的に主張する
≪3.異質な集団において交流する能力≫
6.他者の立場で物事を考える
7.目標を達成するために他者と協働する
8.意見の対立や理解の相違を解決する
【手段の改善】
1.「学び方」の習得

①個の学び方

フレームワークの基礎を覚え、中学生のうちに「自分の学び方を考える」きっかけを与えたいと考えました。 ノートと手帳(スケジュール)のフレームワークを活用するスキルを指導し、自分なりのノートの取り方やスケジュールの管理の仕方を身に付けさせていくことがねらいです。ノートはフレームに分けやすい方眼ノートを使用させています。板書、気づき、要約、まとめをそれぞれのフレームに記入します。その結果、自然に情報を整理する力が身に付いていくことになります。また、ノートが後に見返すであろう「未来の自分」へのプレゼン資料のような役割も担い、表現力のアップにも役立つことになります。日常的な学習活動の中でノートや手帳を活用することで、自分を知り、計画を立て、見通しをもつ、「学びのPDCA」が繰り返されることになります。

② 協働の学び方

日本の小学校において説かれがちな「みんな仲良く」へ問題提起する考え方として、本校では、対立はごく普通のことであり、仲良くするのは大変なことであると説いています。
その前提で、対立を予測、意識、解決することを随時自覚させ、感情をコントロールしていくことを学ばせています。
対立を乗り越えるための自分自身の行動スタイルを確立させることがねらいです。

工藤 勇一 氏(千代田区立麹町中学校 校長)

2.社会へのモチベーション ロールモデルを探す
社会とのつながりを意識した教育活動として下記のような取り組みを実施しています。
・1年生 大学・専門学校訪問

・2年生 クエストエデュケーション(1年間にわたる企業への模擬インターンシップ)
・2年生 スキルアップ宿泊 
・3年生 ツアー企画取材旅行
・3年生 模擬裁判

【アフタースクールについて】

3年目となる本校のアフタースクールは、生徒が自由に選択し参加することができます。下記の三つに分けて運営されています。
 1.麹中塾
 2.部活動
 3.サークル
麹中塾には、近隣の東京大学・東京理科大学・上智大学の大学生たちが自主運営する校内塾があります。学生たちは私のマネジメントノウハウを理解し、独立的に経営を行っています。学生たちは、生徒たちの学力を高めることよりも、「学び方」を教えることに主眼をおいて指導しています。その他、麹中塾には外部委託の英会話スクールや、プロ講師に来ていただく水泳講座、華道、茶道、アナウンス講座なども設けられています。

サークルは、農場経営を学ぶ麹中ファーム、演劇サークル、フォトグラフサークル、プログラミングサークル、理科サークルなど外部人材による多様で専門的な活動が行われています。

【学校改善の基本的な考え方】

学校改善はすべての人を主体者に考えてこそ可能となります。もちろん生徒自身こそが主体者であり、それを自覚させる必要があります。生徒自身が学校改善に関われるよう、今年度から生徒が学校運営協議会に参画する機会を設けています。

工藤校長先生の対談詳細はこちら(教育共感インタビュー)
http://www.careerlink-edu.co.jp/educators/network/2017/03/kojimachi.php
第二部企業による教育支援-資質・能力育成型プログラムの挑戦 

1)株式会社日立製作所
増田 典生 氏(ICT事業統括本部 CSR部 部長)

日立製作所 情報・通信事業部門のCSRの方針「本業であるICTを活かし、社会課題の解決に貢献する」ことを軸に、社会課題の一つである「人材育成」に対する施策の一つとして、社員が講師として実施する、小中学校向け情報教育出張授業プログラムの内容をご紹介いただきました。

増田 典生 氏(ICT事業統括本部 CSR部 部長)

弊社がご紹介する教育プログラムは、工藤校長先生がお示しされた麹中生のめざす生徒像に置き換えると、以下の能力を育成するものであると言えます:
2.信頼できる知識や情報を収集し、有効に活用する
7.目標を達成するために他者と協働する
8. 意見の対立や理解の相違を解決する

日立の最大事業フィールドの一つが情報・通信事業です。また今日の日本の大きな社会課題の一つが「次の世代を担う人材の育成」であると認識しており、本業であるICTを活かしてこれに貢献したいという想いからプログラムを展開しています。プログラムは、中学生向けと小学生向けの二種類あり、単元連動である点と、三部構成(社会科・情報教育・キャリア教育)である点が特徴です。

小学生の授業では、社会科の情報ネットワークの単元に連動し、情報を分析・活用しコンビニを出店する場所を考えます。なぜ、どうしてその場所を選んだのか、人により情報の読み取り方も違いますので、話し合いの中で、それぞれの根拠を深めます。最終的に自分達が社会に関わっているということを意識してもらうこと、また、情報を通し社会を便利で豊かにするしくみをつくる仕事があることを知ってもらうことが目的です。 中学生の授業では、情報モラルの観点から情報活用力を育成することをめざし、ジグソー法を用いた協働的な学びが展開されます。SNS上で情報を正しく利用した例、間違った情報を活用した例、情報から間違って判断した例の三つのパターンでシナリオから情報を読み取るワークを通し、「情報を活用するときに大切なこと」を生徒自身が考えます。

人材育成においては、CSR部以外の社員を講師としています。活動の副次的な効果として、自社へのロイヤリティ・業務へのモチベーションの向上につながっていると感じています。

<参加者アンケート(抜粋)>
【企業】
自社の強みを生かしたプログラムと社会のニーズのマッチングが実現している
情報過多な中でのコミュニケーションの大切さ=ICTの役割を改めて認識した
社員講師が学校とかかわり、モチベーション向上につながっていることを会社として認識し、サポートしていることがすばらしいと感じた
【教育関係者等】
ぜひ本校でも実施したいと感じた
ジグソー法を取り入れているところが興味深い

2)パナソニック株式会社
歌川 聖彦 氏(CSR・社会文化部 CSR・企画推進課 主務)

パナソニックの「企業市民活動・次世代育成支援活動」の本質的な考え方を基盤とし、オリンピックとパラリンピックをテーマにした先進的な教育支援活動についてご紹介をいただきました。

歌川 聖彦 氏(CSR・社会文化部 CSR・企画推進課 主務)

パナソニック社の企業市民活動・次世代育成支援活動の根本は、松下幸之助から受け継いでいる、事業を通じて社会をより良くするという経営理念であり、社会貢献活動を「企業市民活動」と呼んでいます。
次世代育成・環境保全を主なテーマとし、次世代の健全な育成なくしては、将来の世界・日本の発展はないという考えのもと、社会総がかりで取り組むべき課題として、企業でなければできない強みを活かした教育プログラムを、様々なパートナーと連携しながら進めてきました。

① グローバル環境教育―エコ・モノ語
講師の社会への参画意識を高めるため、全社活動として全国で社員講師を募り実施しています。
キャリア教育アワード第一回で最優秀賞をいただきました。
② Kid’s Witness News
創造性やコミュニケーション力を養うことを目的とし、プロの映像作家を派遣し、映像制作機器を提供することで、子どもの映像を使った表現活動をバックアップしています。
③ 工作教室
ものづくりの面白さや、環境について考えるプログラムです。

これまでは、前述の通り環境教育を中心にしていましたが、これからは生きる力、つまり、自らの人生をデザインできる能力の伸長に重点をおいたキャリア教育へシフトさせていきたいと考えています。その中心となるのがオリンピック・パラリンピックをテーマにしたプログラムです。パナソニックでは、1988年より、ワールドワイドスポンサーとして継続的にオリンピックに貢献しており、パラリンピックのワールドワイドスポンサーとしては、2020年までの契約を締結しました。これを契機に、オリンピック・パラリンピックをテーマとした教育支援に取り組むことが決まりました。大会の映像を使用できるという当社の強みを生かし、映像教材を中心とした教材の組み合わせで、先生が自立的に実施できるようなプログラムを開発しています。

「21世紀型能力」育成をめざし、子どもが身近に感じられるテーマを社会背景と関連づけ、基礎力・思考力・実践力の三層構造を軸としたプログラム構成となっています。

現在のラインナップは以下の通りです:
1.大会の意義とそれを支える人々 2.多様性と国際理解 
3.テクノロジー&イノベーション 4.多様性と共生社会(4月に完成、発表する予定)

主に、体験学習の場を提供すること、教材を提供すること、先生方同士が学びあう機会を提供することなどの展開を予定しています。

<参加者アンケート(抜粋)>
【企業】
現在の教育課題を解決する、先進的な取り組みだと感じた
長年に渡り多様なプログラムを提供されてきた秘訣などもっと知りたかった
環境教育から「生きる力」にシフトした点が大変参考になった
【教育関係者等】
アクティブ・ラーニング・キャンプやプログラム自体が教育現場にとって魅力的
パラリンピックのアプローチが大変興味深い。これからの社会に必要なさまざまなテーマにつながってくると感じた

3)大日本住友製薬株式会社
郡 真二郎 氏(コーポレートガバナンス部 コーポレート・コミュニケーショングループ)

研究開発を基盤とした新たな価値の創造により広く社会に貢献することをめざす大日本住友製薬ならではの「遺伝子診断」をテーマとするプログラムについて、開発背景や展開事例をご紹介いただきました。

郡 真二郎 氏(コーポレートガバナンス部 コーポレート・コミュニケーショングループ)

私たちは医療用医薬品の研究開発・製造販売をしている製薬会社です。企業理念を「人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献する」と掲げています。また、グローバルスローガン「Innovation today, healthier tomorrows」は従業員一人一人が、つねに自ら変革(=Innovation)を追求しながら、新たな発想や高い研究開発力により革新的な新薬を社会に届けることで、患者の皆さまとそのご家族が、より健やかに自分らしく(=healthier)過ごせる日々を実現したいという、私たちの強い意思を込めており、教育支援活動の背景にもこれらの願いが込められています。

弊社の次世代教育支援プログラム「科学技術と人の幸せ」の開発においては、「これからを生きる子どもたちに身につけてほしいことは何か?」というテーマで考え、
 -豊かな感性を持ち続けてほしい
 -いのちの尊さを大切に思う優しい人になってほしい
 -自ら道を切り拓く大人になってほしい
との結論に至り、これらをプログラムのねらいとしました。同時に、企業が進める活動意義を明確にし、中・長期的な視点を持った社内の人材づくりや当社のファンづくりも目的の一つとし、プログラムを開発しました。

授業は進行のプロである教員と専門知識を有する弊社社員のコラボレーションで実施しています。テーマは正解が一つではない、非常に難しいテーマです。まずは自分の考えをまとめ、グループで意見を交換し、発表まで行います。その後、弊社社員がこのテーマにかかわるプロとしてコメントをします。科学技術は人の幸せのために発展し続けています。一方で、知らずに済んでいたことを知ってしまう時代になってきているとも言えます。実生活の同様の場面で、どのように対応、判断すべきかを考えてもらう内容になっています。

複数の教科に関連するテーマですので、学校側の希望を汲みながら、道徳の授業以外にも、家庭科(保育)、国語(ディベート)、総合的な学習の時間など、柔軟に展開しています。また、高校生に向けては、文理選択の一つのきっかけとして、製薬会社の仕事について紹介するキャリア教育も行っています。製薬会社では薬学部出身者だけではなく多様な学部出身者がいることや、新薬ができるまでのプロセスや楽しみ、苦労なども伝えています。

<参加者アンケート(抜粋)>
【企業】
正解のない学習のあり方、授業が終わっても考え続けるテーマとして、自分の人生のテーマ(生き方)につながる授業だと感じた
企業の特色が出ていて、ならではの内容である
B to Bだからこそ生まれたプログラムだと思いました。事業ドメインと命の大切さを考えさせることがリンクしていて、社会人も受けてみたい授業である
【教育関係者等】
製薬会社としての専門性が生きているコンテンツ。これからの時代で向き合う可能性が高いテーマであると感じた
一つのテーマで学校によってテーマを変える、科目が変わるのが印象に残った
総括「協育」をどう実現するか

若江 眞紀(キャリア教育プログラム開発推進コンソーシアム 代表) 

「社会に開かれた教育課程」の実現には、社会教育・学校教育が目的意識を共有・連携し、実社会のリアルなテーマやツールを効果的に活用しながら児童生徒の資質・能力を育成することが求められます。教育界と産業界がうまく連携するためには、お互いを知ることが重要です。まず、今学校が何をしようとしているかを知り、事例発表いただいた企業の皆さまが挑戦してくださっているように、丁寧にプログラムを作り、実践していくことが大切です。

今、日本の教育は大きな変革期を迎えています。
学習指導要領が改訂されるたび、その内容が授業に反映され、児童生徒に還元されたころに、また指導要領が改訂される・・・という繰り返しでした。ただでさえ、忙しい先生方だけで教育の変革を実現することは容易ではありません。社会に開かれた教育に企業が参画し、学校現場と共によいプログラムを作り、実践する-「協育」の実現にむけて、お互い学び合いつづけましょう。

<来場者内訳>

グラフ:来場者内訳円グラフ

 
- 企業 68%
- 教育関係・学校 21%
- 団体等 7%
- 不明 2%
- メディア 2%
<アンケート結果 抜粋>

グラフ:アンケート結果 来場者全体の満足度グラフ

全体
- 非常に満足 48%
- 満足 46%
- どちらともいえない 1%
- やや不満 2%
- 不満 0%
- 未記入 3%

グラフ:企業へのアンケートグラフ

企業:現在および今後の教育支援について考える・見直すきっかけとなったか
- はい 75%
- いいえ 0%
- どちらでもない 10%
- 未記入 15%
     

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