インタビュー

独立行政法人 大学入試センター 理事・副所長  伯井 美徳 氏インタビュー

インタビュー人物

変わる日本の教育~「真の学ぶ力」を育成するための一体的な教育改革へ

独立行政法人 大学入試センター 理事・副所長
伯井 美徳 氏

<プロフィール>
文部省文化庁、初等中等教育局小学校課、高等学校課、宮城県教育委員会を経て、2003年4月横浜市教育委員会委員長に就任。その後は、文部科学省初等中等教育局において主任視学官、教育課程課長等を歴任。
2015年4月、大臣官房審議官に就任。第二次安倍内閣 教育再生実行会議第四次提言をふまえ、今注目の集まる大学入試改革に向けた、高等学校教育と大学教育の連携強化を担当する。

変わる日本の教育~「真の学ぶ力」を育成するための一体的な教育改革へ

Q:最近、「教育改革」「21世紀型能力」「キーコンピテンシー」といったキーワードをよく耳にしますが、今日本の教育指針を検討する中でどのようなことが起きているのでしょうか。
A:簡潔には、子供たちのキャリア形成を見据え、社会に出たときに、どんな力が身についているべきか、という「資質・能力」を育成する視点から、教育目標、内容を見直しています。今の子供たちが成人して社会で活躍する頃には、生産年齢人口の減少、グローバル化の進展や絶え間ない技術革新など、社会や職業の在り方そのものが変化し続けると考えられます。 
そうした厳しい挑戦の時代に、自立し、他者と協働しながら課題解決や新たな価値を創り出す、未来を切り開いていく力を子供が身につけるためには、学校教育の在り方も進化しなければなりません。これまで以上に、学ぶことと社会とのつながりを意識し、「何を教えるか」という知識の質・量の改善に加え、「どのように学ぶか」という、学びの質や深まりを重視することが必要になりますし、その成果はテストの点数だけでは測れない「どのような力が身についたか」で、見とることになります。
もちろん、この見直しはこれまでの学びを否定するものではありません。すでに行われている学校における教育活動の一つ一つを、資質・能力の育成の観点から体系的・系統的に再構成し実践することが、子供たちの社会的自立、つまりキャリア形成をうながすと考えられます。

Q:具体的には、どういった「資質・能力」の育成を重視す
るのでしょうか。

A:これまでの学習指導要領でも「生きる力」と表現していましたが、何事にも主体的に取り組もうとする意欲や、多様性を尊重する態度、豊かな感性や優しさ、思いやりといった、学校現場では当たり前のように指導されている資質を育てることに加え、今後特に、リーダーシップやチームワーク、コミュニケーション能力といった、他者との協働のための力が重要視されます。これらの資質・能力を総称して「真の学ぶ力」として、体系的な育成をめざします。 

Q:学習指導要領の内容や目標も大きく変わるのですか。
A:「真の学ぶ力」の体系的な育成をめざす中で、「教育目標・内容の改善」、「学習・指導方法の在り方」「育成すべき資質・能力を育む観点からの学習評価の改善」の検討が進められています。「何ができるようになるか」を目的に据えて、「何を学ぶか」を「どのように学ぶか」と関連づけながら見直しています。特に、現場では、今後「学習・指導方法の在り方」について議論いただきたいところです。「どのように学ぶのか」における学習指導要領のフォーカスとしては、課題発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、つまり「アクティブ・ラーニング」が、効果的な学習手法であるとして推奨されます。



Q:「アクティブ・ラーニング」により「主体的・協働的な学び」をめざすということは理解できるのですが、具体的にはどんな授業をすれば「アクティブ・ラーニング」と呼べるのでしょうか。
A:児童・生徒が能動的に参加する学習手法、例えば、課題発見解決型学習、体験学習、調査学習のほか、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク、プレゼンテーションなどさまざまな方法があります。
小中学校では、すでに取り組まれている学校が多いかと思いますが、残念ながら高校教育では、依然として一斉学習・板書を中心とした非活性な学習手法が中心であるのが現実です。
「アクティブ・ラーニング」を効果的に導入するためには、子供たちの興味喚起をうながし能動的に参加できるようなしかけが必要となります。その一つの方法として、「実社会とのかかわり」を意識させるテーマを設定し、外部人材や、企業プログラムを活用することは有効でしょう。学習内容に実社会とのつながりを持たせることで、「アクティブ・ラーニング」の効果を高めるだけでなく、子供たちのキャリア教育につながる学びが実現します。現在、学校から企業への支援要望が少ないというアンケート結果も出ていますので、学校現場の先生方には、ぜひ積極的に外部との連携を図っていただきたいと思います。

Q:小学校や中学校での学びが変わっても、大学入試が変わらなければ結局「真の学ぶ力」ではなく受験のための勉強になってしまいます。大学改革は進んでいるのでしょうか。
A:小学校、中学校、高等学校での学びが変わることは、必然的に高等教育の在り方を問うことになります。大学においても同じく「資質・能力」の育成をベースに、「大学入学者選抜」「高校教育」「大学教育」この3つの柱を、体系的に見直す「一体改革」が進められています。また、高校教育においては、高校生の4割が学校以外に勉強をしないというデータもあり、学びへの意欲の低下、学力格差への危機感も高まっています。力の育成、そして学習意欲の底上げをめざして、これまでの知識の暗記・再生型で一点刻みに評価する選抜方式を見直し、教育内容そのものを変えていこうというのが「大学改革」の主旨です。

Q:具体的にどのような点が変わっていくのでしょうか。
A:大学入試改革では、多様な背景を持つ子供たち一人一人がそれぞれの夢や目標の実現に向けて努力した積み重ねをしっかりと受け止められる評価方式・体制をめざします。大学入試センター試験を廃止し、進学を希望する子供たちが、大学で学ぶための思考力・判断力・表現力が身についているかを測るための「大学入学者学力評価テスト(仮称)」を平成32年度から導入します。これにより、個々の子供たちの高校での学習活動全般を多面的に評価し、大学の入口段階で求められる力を総合的に測ることができるようになります。また、個別選抜においては、入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)を明確に設定し、多様な背景を持った学生の受け入れを促進していきます。大学のミッションは、受け入れた子供たちが社会人として自立できるようにすることであると改めて確認し、「入ればいい」という大衆化された大学から、社会で活躍するための学びを実現する場としての大学へ変革します。
高校教育の中でも、子供一人一人の学習改善に役立てるための「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を、平成31年に高校2年生から受験できるよう実施し、高校教育の質を担保する取組みも進めています。こちらは全生徒ではなく任意での受験となり、両テストは、現在の中学1年生から新制度が適用となります。



Q:最後に、メッセージをお願いいたします。
A:日本社会がグローバルな変化に対応し、更に発展するために、求める人材像を想定するところから教育全体が見直されているというのが現在の教育改革の根本です。そしてそれは、遠い未来の話ではなく、今の小中学生が大学受験を迎える頃には、受験で問われる力そのものが変わっています。大学に入るために学ぶのではなく、日本の子供たちが、社会人として自立し、生涯学び続けるために「真の学ぶ力」を育成する、またその力を大学、高校、中学、小学校がそれぞれに行うのではなく、体系的な一体改革で推し進めようという大きなながれが造られようとしています。現場の先生方には、子供たちの出ていく社会を見据え、資質・能力を育成するという視点から、日々の指導や学習手法について今一度考えていただければ大変有り難いです。また、産業界には将来、会社を支える人材育成の観点から、このながれを積極的にサポートしていただきたいと思います。


○インタビュアー
キャリア教育プログラム開発推進コンソーシアム
事務局長 若江 眞紀
(2015年9月1日時点での内容です)


1「日本創生のための教育改革」、産業競争力会議 課題別会合(第7回)資料3(平成27年6月4日)  
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/kadaibetu/dai7/siryou3.pdf

2 参考「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」、中央教育審議会 資料3用語集(平成24年8月28
日)
 http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2012/10/04/1325048_1.pdf
 

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