2022年1月14日

“STEAM”とは何か? ~産業界の動きと、教育現場におけるSTEAM教育の本質的価値

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「STEAMとは何か?」の画像です。

STEAM教育、と聞いて思い浮かべるのはどんなイメージですか?
多くの人が、子どもたちが楽しそうにプログラミングしている姿を想像するのではないでしょうか?確かに、プログラミングもSTEAMのひとつであるかもしれません。実際のSTEAM教育はScience、Technology、Engineering、Art、Mathmathicsという、学校では「教科」として分類されているような、多様なジャンルの学びを関連付けることに意味があり、プログラミングや、テクノロジーなど、一部の分野に閉ざされたコンセプトではありません。

なぜ今、STEAM教育なのでしょうか。それは、日本発の研究や事業イノベーションへのニーズが根底にあります。
国の<骨太方針2021>(正式には「経済財政運営と改革の基本方針2021 日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」)が示され、イノベーション人材の育成は、人づくりの大きな課題となっています。経団連主催による産学連携によるSTEAM教育の推進に向けた懇談会の提言を受けて、2021年10月には企業がSTEAM関連の教育コンテンツを提供するなどの取り組みを推進するための「学びのイノベーション・プラットフォーム」も設立されました。
https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2021/0826_05.html
今後、この動きは加速化し、多様なコンテンツが提供されるようになるとともに、新たに「それを使える人材」の育成が推進されるでしょう。

しかし、教育現場におけるSTEAM教育の実践にとってもっとも重要なことは、「何を学ぶか」ではなく「どのように学ぶか」です。

公教育改革への産業界の参画モデル開発をけん引するのが、経済産業省です。経済産業省は、学びと社会の連携促進事業(通称:未来の教室実証事業)として2018年1月より、「未来の教室」とEdTech研究会を通じ人の創造性や課題解決力を育み、個別最適化された新しい教育をいかに構築すべきかを議論し、子どもたち一人一人が、未来を創る当事者(チェンジメイカー)に育つための学習環境や学習機会の創出に企業や地域社会のリソースをどう活かすか、その実証を全国で進めてきました。2019年6月25日に発表された第二次提言では、改革に向けた3本の柱の一つとして「学びのSTEAM化」が上げられました。

経済産業省:未来の教室実証事業 公式サイト
https://www.learning-innovation.go.jp

未来の教室 
STEAM Library(個別最適な学びのためのオンラインコンテンツはこちら)

https://www.steam-library.go.jp/

「学びのSTEAM化」とは一体何でしょうか。それは、教科学習や総合的な学習(探究)の時間、特別活動を再整理・関連させたカリキュラム・マネジメントを通じ、プロジェクト型・探究型・分野融合型実践的な学びのプロセスそのものです。つまり「何を」ではなく「どのように学ぶか・教えるか」を再定義する機会であるということです。世の中の事象は、目下の課題である新型ウイルスをはじめとし、ひとつの分野・専門領域だけでは解決できないことばかりです。教科ごとに分断することで、効率的に知識・技能を身につけることを重視してきた学習のあり方から、ひとつのテーマに対し、多角的にアプローチしたり、他の専門性を持つ人と協働しながら課題解決をする学びへの変換は、コンテンツや教員の指導力だけではなく、わたしたちの「学習の概念」「カリキュラムの概念」そのものをアップデートすることを要求します。教育現場にとって、とてもチャレンジングなことです。

未来の教室実証事業の2021年度「実証テーマA」では、STEAMカリキュラム開発を実証研究しています。広島県では、県立高等学校・専門高校・専門学科の教育課程の見直しを図るプロセスの一部を、未来の教室実証事業として検証し、今年度は4つの工業高校の1・2年生が、学科横断で同じカリキュラムを同じ時数で実践中です。プロジェクト型かつ専門性を他の分野や未来とつなぐ学びが、県内のどこの工業高校に行っても実現できるように、教育委員会・各学校が連携しながら、まさに「カリキュラムの概念」をアップデートしようとしています。そして、その実現にはEdTech、テクノロジーの活用が必須であることも明らかになっています。

STEAM教育をめぐる議論を深めることは、「何を学ぶか」だけでなく、それらを「どのように学ぶのか」を戦略的に考えるチャンスです。未来の教室の事例から、現場で実装可能なカリキュラム・マネジメント・モデルが提示され、「学びのSTEAM化」が真の意味で実現することが期待されます。
※広島県の取り組みは、未来の教室実証事業者である株式会社キャリアリンクのWebサイトで発信していきます。

株式会社キャリアリンク 
未来の教室実証事業成果報告(2020年度)

https://www.learning-innovation.go.jp/verify/e0100/

株式会社キャリアリンク 
未来の教室実証事業 2021年度の事業について

https://www.careerlink-edu.co.jp/info/2021_learning-innovation