2026年2月16日

「社会参画する力」を育成する消費者教育の実現~学校・企業の効果的な連携とコーディネーターの役割

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「社会参画する力」を育成する消費者教育と、学校・企業の役割

OECD/INFE(国際金融教育ワーキンググループ)によると、金融教育や消費者教育を体系的に実施している国が増えていると報告されています。1日本でも、成年年齢の引き下げを契機に、主権者として必要な資質能力の育成の一環として、中学校段階からの消費者教育を本格的に推進しています。その鍵を握るのが「社会のリアル」を伝える企業と学校の連携です。

本コンソーシアムの運営母体である株式会社キャリアリンクは、令和5年、令和6年と、文部科学省より「主体的に社会に参画するための力の育成に係る調査研究事業」を受託し、調査・研究してきました。令和7年度は、後継事業となる「主体的に社会参画する主権者・消費者の育成に関する実践事業」において、西東京市技術・家庭科研究会(東京都中学校技術・家庭科研究会第8分科会)が文部科学省から指定を受け家庭科の授業に企業等外部のリソースを活用した出張授業を取り入れる実践を推進しています。今回は、本実践を通じた研究の概要と、協育の事例をみなさんに共有します。

  :OECD Financial Education for Youth: The role of Schools
参考: 文部科学省 令和6年度 主体的に社会に参画するための力の育成に係る調査研究事業
参考: 文部科学省 令和7年度 主体的に社会参画する主権者・消費者の育成に関する実践事業

01今、学校現場ではどんな消費者教育が行われているのか?

前述の文部科学省「令和7年度 主体的に社会参画する主権者・消費者の育成に関する実践事業」に採択された、西東京市技術・家庭科研究会は、以下のような消費者教育に関する研究を進めています。

研究の問い

「売買契約」や「消費者被害」に関する指導に当たり、具体的な事例に基づいた学習を、自立した消費者としての消費生活・消費行動等に関する深い理解や態度の形成に結び付けるために、年間指導計画を踏まえた題材・単元の設定及び授業の展開をする中で、外部団体・他校種等との連携を含めて、どのような工夫が考えられるか。

中学校家庭科には、「売買契約」や「消費者被害」の学習が位置づけられています。生徒にとって「身近ではない」と感じる内容を理解し、自分たちの生活や将来にいかしていくために、どんな流れで学習を進めるべきか、またその中で、テーマに関連する実社会のリソースを持つ「外部団体との連携」「企業の出張授業」をどのように取り入れることが有効なのかを、実践を通じ研究されています。

02社会の変化と中学校における「消費者教育」

中学校の消費者教育は、長く家庭科を中心に「生活を整える力」の育成のため、衣食住を題材に、買い物・家計管理・暮らしやすさの工夫など“賢い消費者”の基礎を積み上げることに重きが置かれていました。一方で近年は、契約・信用・デジタル取引が生活に深く入り込み、社会的な問題意識の高まりを背景に、「一消費者として自身の身を守る力」が重視されるようになりました。令和4年には成年年齢引下げがあり、18歳から未成年取消権が使えない契約が増えるなど、中学校~高等学校段階で知っておくべき知識の実践的教育の必要性が一段と高まりました。現在、消費者教育は、従来の「知識理解」から「意思決定(判断)と行動(契約・トラブル予防・社会参画)のためのトレーニング」へと重心が移っています。学校の授業において、リアルな社会事例、活用できるツール、専門家の視点などのニーズが高まっているのにはこのような背景があります。

03学校と企業をつなぐ協育と、その実現のためのコーディネート

今回の「主体的に社会参画する主権者・消費者の育成に関する実践事業」において、株式会社キャリアリンクは、以下のようなサポートをしています。

研究サポート
3年間のカリキュラム・年間計画を踏まえた、単元計画・授業案へのアドバイス(会議参加)教育効果測定(生徒アンケート素案)の作成
出張授業コーディネート
協力企業の募集・声かけ
学校―企業オンライン会議の設定・開催(各授業につき4回目安)
授業日当日の企業学校入りコーディネート(写真・アンケート)  など

今年度、出張授業をコーディネートするなかで、特に重要だと感じるのは、事前・事後の打ち合わせです。出張授業をただ実施するのではなく、学習の流れに沿って位置付け、生徒が問題解決していく中に自然に取り入れるには、家庭科教員と出張授業をする企業講師の意識合わせが欠かせません。そこで、キャリアリンクは、2年間の先行事業における調査研究の知見をいかしてコーディネートをしています。

  1. 顔合わせ:単元計画の説明(目標の共有)
  2. 授業打ち合わせ:授業内容の確認(教員と企業との協働)
  3. 直前打ち合わせ:当日の動きの確認
  4. ふりかえり:出張授業後の子どもたちの変容を共有

04社会に開かれた教育課程の実現=協育の姿

このようなプロセスは、まさに、目標を学校と社会が共有し、連携・協働していくという、現行の学習指導要領の理念「社会に開かれた教育課程」で謳われている言葉そのものです。今、総合的な学習の時間や、探究的な学びの充実に向けて、外部リソースの活用が求められ、企業等が出張授業や学校教育への支援をする機会が増えています。本事業から見えることは、「出張授業をすること」が大切なのではなく、「どのような学びのために、いつ・どのような出張授業をするのか」という設計段階から、学校と企業が共に描くこと(または双方をコーディネーターがつなぐこと)、そのために時間や機会を設けて話し合うことが、いかに重要であるかということです。一方通行な「講義」や、学校のニーズに応えるだけの「教材の提供」と比較すると労力がかかることですが、生徒の学びの充実は、最終的に参画する企業にとってリターンや気づきの多い実証実験の機会にもなり得ます。ひとつの新たな「協育」のモデルとして、西東京市技術・家庭科研究会の最終報告に期待したいと思います。