フォーラムレポート

教育CSRフォーラム2012報告書

2012年2月 9日 11:30

教育CSRフォーラム2012 ~企業の教育貢献の今とこれから~

2012年2月6日(月)教育CSRフォーラム2012を開催いたしました。多くのご参加をいただき誠にありがとうございました。

21世紀社会に求められている教育とは何か、その実現のために産業界はどのような支援をし、いかに教育界と連携していくべきか、というテーマのもと、さまざまなお立場からの情報共有により、教育支援への理解と関心を深めました。

開催日時 2012年2月6日(月) 13:30〜17:00(13:00開場)
開催場所 JFAハウス http://www.jfa.or.jp/jfa/organization/
対 象 次世代育成支援に取り組む企業、団体関係者
参加者人数 70名
時 間 実施内容 内容
13:30 開会挨拶  
13:40 【第1部】講演 「グローバル社会が求める多様な学びのスタイルとは」
14:45 休憩  
14:55 【第2部】事例紹介

・社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
スポーツを通して将来設計を考える
「キャリア教育プログラム」

・花王株式会社
自社のリソースを活かした多面的プログラム展開

15:50 【第3部】インタビュー対談

「新しい学びのためのNNs(Networkof Networks)実現のために」

16:55 閉会の挨拶 学校スマイル応援プロジェクト紹介
17:05 終了  

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■第1部:事例紹介

グローバル社会が求める多様な学びのスタイルとは
東京学芸大学客員教授/前・和田中学校長/元リクルート社フェロー

藤原和博 氏

 

「超成熟型社会」を生きていくために必要な力とは何か、をテーマに、21世紀に求められる「様々な知識や視点から結論を組み立てていける力=”情報編集力”」を育てる重要性や、その方法論について、ワークショップを通してわかりやすくご提示いただきました。

キャリア教育プログラムに”情報編集力”を育てるしかけを取り込み、いかにして地域・学校・産業界が三位一体となって教育を改革していくべきかなど、さまざまな事例を交えてのお話に参加者は大きく頷いていました。

教育改革は児童・生徒のためだけのものではなく、そこに携わるすべての人にとっての「キャリア設計」につながるという、新たなヒントもいただく、盛りだくさんの講演内容でした。

 

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【超成熟社会を生きていく力は〜”情報処理力”から”情報編集力”の時代へ】

  • 20世紀の成長社会は早く正解を導く”情報処理力”が必要とされていたが超成熟社会では
    様々なものが多様化・複雑化し変化が激しくなるため、様々な知識や視点から結論を組み
    立てていける”情報編集力”が必要とされる。
  • ”情報編集力”で導きだされるのは、1つの正解ではなく、多様な「納得解」でなければ
    ならない。
  • 日本の教育の現状は未だに”情報処理力”を育てる教育に比重がおかれてしまっている。

【キャリア教育プログラムの鍵はクリティカルシンキング】

”情報処理力”から”情報編集力”に頭を切り替えるための鍵は、「多面的な思考、複眼思考、本質を見極める思考=クリティカルシンキング」である。

学校現場だけで上記のような力を育成するのは難しいのが現状である。

企業や地域のなかでは様々な情報を多様な視点から分析し、意見を聞き、伝え、新しいものやサービスを生み出すことが、日常的に行われているだろう。まさ に”情報編集力”を駆使し”納得解”が生まれている現場である。このような地域・企業のノウハウを生かし、”情報編集力”や”クリティカルシンキング”を 磨く手法を取り入れたキャリア教育プログラムが提供されることが求められている。より多様で効果的な教育が求められる今、地域・学校・産業界が三位一体と なって教育の改革に取り組まなければならない。そして、教育の改革は児童・生徒のためだけのものではなく、そこに携わるすべての人にとっての「キャリア設 計」につながるだろう。

参加者からの声(アンケートより抜粋)

  • お話を聞くのは3度目ですが、いつも新鮮で刺激的です。
  • 成長社会→成熟社会へ。しっかり、心にとどめて今後も取り組んでいきたいと思います。
  • 社会の構造の変化に伴って、教育においてどのような考え方が必要とされているのか
    学ぶことができました。
  • 中学生に向き合うには自分自身の人生観をきちっともって接することが必要だという
    ことが印象的だった。
  • 情報処理力から編集力、「正解」から「納得解」ということは何となく感じていたところ
    でした。私自身の今後のキャリア教育活動に生かしていきたい。

■第2部:事例紹介

<事例1>社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
スポーツを通して将来設計を考える「キャリア教育プログラム」

八田 茂 氏(社団法人 日本プロサッカーリーグ キャリアサポートセンター リーダー)

「キャリア・デザイン・サポートプログラム」導入の背景やプログラムの特徴や、プログラムについての反響、今後の展開について紹介いただきました。

クラブチームのアカデミー選手(ジュニアユース)向けに開発された教育プログラムは、Jリーグを取り巻く社会や人々について理解し、将来のキャリア形成に対する意識向上をねらいにしている一方で、指導するスタッフの新しい気づきや、保護者や地域との連携を促していることを、動画を交えて丁寧にご説明いただきました。将来的にはクラブチームの地域の中学校での実施など、プログラムの展開に期待が高まるお話でした。

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プログラムは、Jリーグに参加するJクラブアカデミー(選手の育成組織)のジュニアユースの選手を対象に実施し、競技者としてのみならず、幅広いキャリア観の育成をめざしていることに言及。

選手やクラブが社会と遠い存在になっていることを危惧していたこと、人作りが大切であるという理念から、選手に地域・社会を意識させることからスタート。プログラムJリーグの産業構造の特性の理解やJリーグに関わるさまざまな職種の仕事によって成り立っていることを知ることで、自らの将来のキャリア形成への意識向上につなげている。

またプログラムは選手と指導するスタッフや保護者、地域の人々の連携を強くし、選手だけでなく双方に新しい気づきをうながし、改めてキャリアについて考える良い機会になっている。

現在はJリーグ内でのプログラムの実施にとどまっているが、ホームタウン活動を実施するJクラブのスタッフを介して、地域の小学生や中学生が自分自身の将来設計について考える「キャリア教育プログラム」として、更に発展させていく予定。

参加者からの声(アンケートより抜粋)

  • サッカープレイヤーとしてだけでなく、サッカーを通じて世の中のしくみを考えさせる教育を行っているところが大変興味深かったです。子供が熱心に考え、自分のアイデアを導いている姿が印象的でした。
  • プログラムの提供が企業にとってもメリットがある点がわかりよかった。
  • 今後一般の中学校への展開を予定との事。ぜひ一度見てみたい。

<事例2>花王株式会社
自社のリソースを活かした多面的プログラム展開

深澤純一 氏
(花王株式会社 生活者コミュニケーションセンター 技術・渉外部部長)
朝倉 歌子 氏
(花王株式会社 生活者コミュニケーションセンター 技術・渉外部 社会交流グループ)

花王の教育支援プログラムの特徴と今後の展望についてご紹介いただきました。

実際にどのようにプログラムを実施しているのか、具体例やツールについても、現場のエピソードを交えてご紹介いただき、さらには多面的なプログラム展開を支えるリソースの集約の方法、組織の構造や会社としての教育支援に対する姿勢に言及いただきました。全社員参画型の包括的な教育支援を実現させようという強い想いが感じられ、更に日本から海外へと教育支援の輪を広げていくという発展性のあるお話でした。

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【プログラムの特徴とねらい】

「こころ豊かな生活文化の実現に貢献する」という理念のもと、商品開発の過程で生み出された生活に役立つ知見、技術を「こどもの生活力の向上」に役立ててほしいという思いで、教育支援に取り組んできた。

花王のプログラムの特徴は、教科単元と関連性をふまえること、意欲的な姿勢と達成感を重視した体験を取り入れること、生活の中での実践につなげるツールの工夫、家庭を巻き込むしかけがあることである。

また、出張授業だけといった一面的な支援ではなく、事前・事後授業(教員実施)、出張授業(花王講師実施)、宿題(家庭で実施)の組み合わせが可能な多面的な支援を行い、知識や技術の定着力を高める工夫もしている。

【多面的なプログラム展開を支える基盤】

多面的なプログラム展開を支える、リソースの集約の方法、組織の構造や会社としての教育支援に対する姿勢に言及。

多面的展開を支えているのは部署横断型組織である、生活者コミュニケーションセンターである。

生活者コミュニケーションセンターは消費者相談室をかかえる、消費者にもっとも近い組織であり、商品情報、技術、知見(商品開発)などのリソースが集めやすく、事業部門と常に交流しているので、組織として全体を動かしやすい側面もある。

また花王の教育支援は全社員が参加し、現場である学校に行くことを目標に活動している。

花王の理念を行動で実践し、会社を誇りに思ってほしいという気持ちで参加をうながし、研修にも力をいれている。リーダーの育成や事務局の動向など参加へのモチベーションが保てる工夫も大切である。

参加者からの声(アンケートより抜粋)

  • 部門横断型の組織や研修等、プログラム展開における体制づくりが大変参考になった。 
    生活と自社のリソースとの結びつきを効果的に体験させやすいと思いました。
  • 企業のリソースと学校のニーズをうまく調和されていると感じました。弊社もこの事例を
    見習って良い活動ができればと思います。
  • プログラムの設計が参考になりました。

■第3部:インタビュー対談

「新しい学びのためのNNs(Network of Networks)実現のために」

三宅なほみ 氏
(東京大学大学院教育学研究科教授/大学発教育支援コンソーシアム推進機構副機構長)
若江眞紀
(キャリア教育プログラム開発推進コンソーシアム代表/株式会社キャリアリンク代表取締役)

各企業の教育支援プログラムを「21世紀型スキル育成を実現できるプログラム」へと高めていく必要性について、今求められる教育や、新しい学びの視点から 考える内容となりました。三宅氏より、新しい学びを実現するために、大学発教育支援コンソーシアムが研究・発信している学習の手法や評価方法はもちろん、 教育現場、研究者、企業、学会、家庭が有機的につながるネットワークの重要性、及び可能性についてもお話をいただき、刺激あふれる対談となりました。

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【今求められる教育とは】

<三宅>今求められる教育は21世紀型スキルを育てる教育といえる。21世紀に必要なスキルは、学習者が互いに理解を深め合い、ゴールを達成したら、次のゴール(新しい課題)を目指して前進する、創造的、協調的なプロセスを引き起こすスキルである。
OECD PISAにおいても現在「学力」のとらえ方が大きく変化している。
※OECD PISA:経済協力開発機構(OECD) による国際的な生徒の学習到達度調査

<若江>OECDは今後どんな学力について調査しようとしているのか?

<三宅>今までは正解のある学力(理科系、数学系)の習得を測定してきたが、2015年を目処に、21世紀型スキルといわれる、活用力・判断力・コラボレーション能力などを測定する方法論を議論・検討している。

<若江>問題作成に関しては、三宅先生が日本からの唯一のメンバーであるが、OECDには日本からはどのような人が関わっているのか?

<三宅>文部科学省や理科数学の教育の専門家、テスト理論、国際比較の専門家など様々な人が関わっている。私も学習科学者(人の学びについて考える科学)として参加している。

<三宅>21世紀型スキルは次の3つの能力だと考えている。

  • コミュニケーション能力
    発表ができるとか、声を大きくわかりやすく・・ではなく、自分自身が伝えたいことを持って、発言できることが必要
  • コラボレーション能力
    自分の考えが相手に話しているうちにまとまる、相手との議論でより良い解答を導くなど、話し合いにより考えが発展すること重要
  • イノベーション能力
    新しい意見を出せるだけではなく、意見の違いを統合してアイデアを高められるスキルが必要

【新しい学びとはどのようなものか】

<若江>ではこのような21世紀型スキルを育てるうえで教育現場で課題となっていることは?

<三宅>今の日本の教育の問題点は

・多様性がない(同じことができるようになることが大切)

・知識や情報を統合する機会が少ない

・他人の意見や出した答えが気にならない(知ってることがばらばら)の3つである。

他人の意見と自分の経験や情報を統合し、科学的な原理原則に結びつけることができれば、真の学力として身につけることができるだろう。これをサポートする1つの手法に”協調学習”がある。

●参考:協調学習〜知識構成型 ジグソー法

ある課題を解決するための別々の視点を各グループに提供し、課題の答えを探る(エキスパート活動)

⇒各グループから一人ずつが集まり、それぞれが持ち寄った知識を統合し、課題解決策
を考える(ジグソー活動)

※協調学習の詳細はこちら(三宅氏研究室HP http://coref.u-tokyo.ac.jp/nmiyake/

”協調学習”を実施した先生からは、子どもたちの知識の定着度が高まり、様々な視点から考える手法に目を向けることができたとの声を頂いているが、教科書を中心とした授業を実施していると、このような教材の作成や視点を持つ事が難しい。
今後、より企業の協力が必要となってくるであろう。

<若江>新しい学びを実現するために、具体的に企業はどのようなプログラム提供を心がけるとよいか?

<三宅>現在の知識提供・体験活動のプログラムから、より思考をうながす手法をとりこんでいかなければいけない。
新しい学びの概念や手法を理解し取り入れるだけで、提供する授業プログラムも変わっていく。企業は常に課題に対して、たくさんのファクターを考え合わせて解決策を導きだすという考え方を持っている。この考え方を子どもたちに教えていく事が大切である。

【どのようなネットワークが有効なのか】

<三宅>新しい学びを実現するには、家庭・地域・企業が協力しあいながら、教育の質を高めることが大切である。そのためには、多様なネットワークがつながりあうNNs(Network of  Network)が必要不可欠。

<若江>ネットワークはどのようにあるべきか?

<三宅>研修者が行った、新しい学びの実態の分析結果を教育現場やプログラムを提供いただける企業と、共有していくことが大切であり、それをもとに企業には、より魅力的な教育支援を行ってほしい。
また、先生方は、先生同士さらに、学校自治体の枠を超えて情報を共有できるしくみが必要になってくるだろう。教材の共有や編集がクラウド環境で行えるなど、学校の情報化もネットワークを成功させる鍵になる。

<若江>一人一台のパソコン環境などどうしても国の予算や支援は、ハード環境に偏りがちである。

<三宅>学校の情報化は、子どもたちに対してのツール提供だけでなく、教材の共有化や学びの記録を共有化ができる根幹になるべきだ。巨大なネットワークを組むのではなく、小さなネットワークのつながりが、更につながって、互いに有機的にお互いを刺激し合える環境になると良い。

<若江>企業は、まず学習指導要領に対応したキャリア教育のプログラムやリソースの提供を積極的に行うことが大切である。さらに今後新しい学びを生み出す手法をプログラムに取り込んでいけば、日本の教育の改革の一歩につながっていくのか。

<三宅>学習科学研究者として企業が持っている専門性に期待しており、企業の力、社会の力が教育を変えていくと思っている。

参加者からの声(アンケートより抜粋)

  • 学び、気づきのプロセスの具体例をみる事が出来、非常に有益であった。
  • 新しい教育のあり方がわかりやすかった。
  • 日本の教育の課題、ひいては今のグローバル時代における日本人ビジネスマンの課題
    についても考えさせられた
    (発信したい、伝えたいものがない=コミュニケーション能力欠如)。教育と企業の連携の重要性を再認識した。
  • これから検討しなければならない課題が明確になった。ベストマッチの内容だった。

■教育CSRフォーラム2012 アンケート集計結果

回答人数 45名

本日のフォーラムに参加されて、いかがでしたか?

設問1) 集計結果

人数(人)

比率(%)

(1)非常に満足

22

49%

(2)満足

22

49%

(3)やや不満

0

0%

(4)不満

0

0%

無記入

1

2%

total

45

 

■参加者からの声(アンケートより抜粋)

・改めて教育と社会について考える機会となりました。

・様々な分野で活躍されている方々の考え方や活動について話を聞くことができ勉強に
 なりました。

・より多様な業界との連携をしたいと思います。

・成熟社会の教育のあり方や、企業事例の社内体制など大変参考になった。

・企業として、学校教育に携わる際に知っておくべきこと、今後の教育の在り方を学ぶ
ことができ、大変参考になりました。

・様々の教育支援のアイディアをいただくことができました。

・これからの社会で必要とされるスキルについて理解できました。

・教育現場の人間として、目からウロコのお話も多く、責任感とやる気が出ました。

・私は小学校で教員をしているが、社会が学校教育に何を求めているのか、知ることが
できた。企業と学校の壁はまだまだ高いように感じられるが、学校としても利用できる
ものはどんどん利用していきたい。 

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