フォーラムレポート

教育CSRフォーラム2014報告書

2014年3月31日 15:07

教育CSRフォーラム2014報告書

2014年3月7日(金) 教育CSRフォーラム2014を開催いたしました。株式会社 日立ソリューションズ様にご提供いただいた利便性のよい会場であったことから、年度末の金曜の午後にもかかわらず多数の教育関係者、企業のご担当者の皆さまにご参加いただきました。

「これからの日本の人材育成」という大きなテーマのもと、国の教育指針を知り、その実現に向けた企業による教育支援の多様なあり方と企業や団体の枠を超えて「学びをつなげる」ことの必要性を実感する機会となりました。

実施概要

開催日時 2014年3月7日(金) 13:30~16:30 (13:00開場)
開催場所 株式会社 日立ソリューションズ 本社別
〒108-8250 東京都港区港南2-18-1 JR品川イーストビル 20F
※JR品川駅直結
http://www.hitachi-solutions.co.jp/company/access/map_kounan.html
内 容 省庁関係者による基調講演、
コンソーシアムメンバー企業による事例発表 等
定 員 80名
※定員に達した場合、申込みを締め切らせていただきます
参加費 無料

プログラム内容

13:30-13:45 ■開会挨拶
キャリア教育プログラム開発推進コンソーシアム
13:45-14:15 ■【第1部】 基調講演
これからの時代に求められる資質・能力を育む教育~
橋田 裕 氏 (文部科学省 初等中等教育局教育課程課)
14:30-16:00

■【第2部】 事例発表
<事例1>
サントリーホールディングス株式会社
次世代環境教育「水育」~未来に水を引き継ぐために~
森 揚子 氏、正田 美紀 氏
(コーポレートコミュニケーション本部 エコ戦略部次世代環境教育

「水育」推進グループ)

<事例2>
株式会社ダスキン
掃除を通して子どもたちの力を伸ばしたい
~本部と加盟店で取り組む学校教育支援活動~

藤原 玲子 氏(クリーン・ケア事業本部 暮らしの快適化生活研究所)

15:30-16:15 ■【第3部】 特別講演
「学びを変える“ビデオ予習型授業”について」
藤原 和博 氏(教育改革家、元杉並区立和田中学校校長)
16:15-16:30 総括 (閉会時間 16:30)

■【第一部】基調講演

「これからの時代に求められる資質・能力を育む教育 ~思考力・判断力・表現力等の育成を中心に~」
橋田 裕 氏(文部科学省 初等中等教育局教育課程課専門官)

子供たちに求められる資質・能力を育成するために、日本が目指すこれからの教育の方向性について、世界的な潮流やデータをふまえ、詳細に解説いただきました。

21世紀社会を生きる上では、学習指導要領の理念である「生きる力」、特に「自分で考え、他者と協働しながら課題を解決していく力」が必要であること、 「思考力・判断力・表現力等」を日々の教育活動を通して育成する必要があること、そのためには「言語活動の充実」が不可欠であることを整理していただくこ とで、なぜ、今「言語活動」と叫ばれているのか、その理由について参加者が明確に理解することができました。

また、言語活動に重きを置きながら、授業における「見通す・振り返る」活動を徹底することなどにより学力向上を実現した秋田県の事例をもとに、「あきた型授業スタイル」の特徴についてもご説明いただき、参加者は熱心にメモをとっていました。

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ご講演内容

●これからの時代に求められる力とその育成のポイント

学習指導要領の理念である「生きる力」とは、「知・徳・体」のバランスの取れた力のことを指している。特に「思考力・判断力・表現力等」の育成が重要であ り、諸外国でも、「キーコンピテンシー」や「汎用的能力」として定義され、世界的にもこれらの力の育成する取組みが進んでいる。知識基盤社会において、変 化に対応していくための力を育てることは、日本だけでなく世界的な教育課題であり、日本は国内外の学力調査結果から、基礎学力は高いが汎用的能力に課題が あることが示されている。

「思考力・判断力・表現力等」の育成には、その手立てとして、各教科等における「言語活動」を充実することが求められる。具体的には「体験から感じ取った ことを表現する」「情報を分析・評価し、論述する」「互いの考えを伝え合い、自らの考えや集団の考えを発展させる」などが挙げられる。

懸念点としては、授業で無理に「話し合う」「意見や感想を述べる」場面を作り出すような、「言語活動」そのものが目的化されることが挙げられる。学校現場では、言語活動を充実させる趣旨を確認した上で、各教科等の目標と関連づけた指導を行うことが重要である。

●秋田県の事例を通して考える授業改善のポイント

全国学力・学習状況調査で全国平均を上回る結果を出している秋田県では、どのような授業が行われているのかを分析してみると、「見通す・振り返る」活動や言語活動の充実が学力の一因となっていることがわかる。

全国調査の学校質問紙と児童生徒質問紙を確認すると、秋田では、「授業の冒頭で目標(めあて・ねらい)を児童生徒に示し、最後に学習したことを振り返る」 ことを徹底しており、教師も児童生徒もその意識が高い。また言語活動についても、普段の授業で「自分の考えを発表する機会が与えられている」と実感してい る児童生徒も多い。

また、秋田県総合教育センター発刊の「あきたのそこぢから」では、「話合い、学び合い」や「見通す・振り返る」活動が重視されており、いわゆる「あきた型授業スタイル」を示している。「あきた型授業スタイル」とは、

・導入:課題を子供のものに

(めあてのキーワードを子どもとともに確認、既習事項や生活場面から課題意識を持たせる)

・展開:学び合いの充実(自ら考えてからペアや全体で学び合う)

・終末:学びの実感(めあてに対応したキーワードで授業をまとめ、振り返る)

以上3つを軸とした授業設計であり、そのために、教員による共同的な研究体制の構築や、優秀教員が教育専門監としてティームティーチングによる実践を行うなど、さまざまな取組みが、徹底した授業スタイルの普及と推進を支えている。

●2020年をターゲットとした成長戦略の一貫としての今後の教育の全体像

第2期教育振興基本計画上では、「自立・協働・創造」を理念とした、生涯学習社会を構築することが、教育のめざすゴールと捉えられている。また、2020 年はオリンピック・パラリンピックの開催も控えており、官民一体となって、日本全体が成長に向かうための人材を輩出することが求められている。

新たな日本の教育の方向性、また社会的な状況を勘案し、平成24年12月より、「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価のあり方に関する検討会」が定期的に開催され、より具体的な資質・能力の育成やその評価の在り方等に関する研究が進んでいる。


参加者からの声(アンケートより抜粋)

・現在の日本の教育がめざす方向が理解できた。

・子どもたちにつけるべき能力が、次期学習指導要領の改訂では重要になると実感した。

・国の現状について、最新データに基づいた知識を得ることができた。

・子どもたちの資質や能力について意識しながら、キャリア教育の充実推進を図っていきたい。

・講演から学んだことを、企業としても取り入れ、より有意義なプログラムにしていきたい。

■ 第2部企業プログラム事例発表

1)サントリーホールディングス株式会社 
次世代環境教育「水育」~未来に水を引き継ぐために~

森 揚子 氏(サントリーホールディングス株式会社 コーポレートコミュニケーション本部 エコ戦略部 課長 「水育」担当)

「水と生きるSUNTORY」のコーポレートメッセージを軸に展開する、サントリー次世代環境教育「水育」について、紹介映像を交えながら丁寧にご紹介いただきました。

事業活動の生命線である「水」をテーマに、「水育」を通して子どもたちに「未来に水を引き継ぐ」ということを伝えたい思いや、出張授業プログラムのポイン トを分かりやすくご説明いただき、企業理念と合致し、ブランディングにつながる次世代教育の取組みのあり方について、参加者は興味深く耳を傾けていまし た。

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【ご講演内容】

「水のサステナビリティ」を実現するために、その重要性を次世代に伝えることをねらいとして実施している環境教育「水育」。自然体験プログラム「森と水の 学校」活動と並行し、授業を通して「水を使うときの努力や工夫」「水を育むための努力や工夫」などについて、学習指導要領の内容に連動したプログラムを、 小学校4、5年生対象に首都圏、京阪神、愛知県、その他水工場所在県(山梨県、鳥取県、熊本県)で展開している。2006年の実施から2013年までに、 781校、約6万人の児童が本プログラムを受けている。

プログラムは、教員による事前授業(授業①)と、水育講師による出張授業(授業②)の2時限からなり、授業に必要なティーチャーズガイド、ワークシート、 映像教材を提供。出張授業では、オリジナルの実験キットを使い、「視覚的」「体験的」に森と水のつながりについて学ぶ。授業を実施した教員の99%が、ア ンケートにおいて「教科の単元のねらいに即した学びを深めるのに有効であった」と答えている。

今後もより多くの学校での授業実施を予定。「水と生きる」企業としての社会的責任を果たしていく。

参加者からの声(アンケートより抜粋)

  • ・企業理念から生まれてきた「水育」について深く共感した。
  • ・具体的な実施内容を知ることができ、参考になった。もっとプログラムの詳細までお話を聞きたかった。
  • ・CSR=企業ポリシーであることを感じた。
  • ・中学、高校へのプログラム展開も期待したい。

2)株式会社ダスキン
掃除を通して子どもたちの力を伸ばしたい
~本部と加盟店で取り組む学校教育支援活動~

藤原 玲子 氏(株式会社ダスキン クリーン・ケア事業本部 暮らしの快適化生活研究所)

年間約3000分の時間を費やす学校掃除。教育活動の一貫でありながらも、それぞれの学校、教師の指導に一任され、「学びの機会」につながりにくかったその時間を、子どもたちの力を伸ばす「授業」として支援する取組みについて詳細にお話しいただきました。

研究会や調査を通して現場の教員のニーズを把握した上で、多様な形態・内容で展開されている学校教育支援活動。その活動を支える体制づくりについて、参加者は熱心に聞き入り、具体的な質問も多数挙がりました。

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ご講演内容

株式会社ダスキン 暮らしの快適化生活研究所では、2000年度より学校の掃除が子どもたちに及ぼす影響について研究を始め、

  • ・掃除をテーマにした授業プログラムの開発とWebサイトによる無償教材提供
  • ・現職教員との「掃除教育研究会」や連携授業の実施
  • ・大学との「掃除によって育成される力(掃除の教育効果測定)」共同研究

などを通して、学校掃除が子どもたちの「力」を伸ばす学習機会の一つであることを確信。
その研究成果と実績を活かし、現在は以下の学校掃除教育支援活動を展開。

1.教員向けセミナー(小・中学校教員対象)

2.出前授業(小学生対象)

3.教育支援カリキュラム(小・中学生対象)※Webよりダウンロード

教員向けセミナーや出前授業を全国で展開するにあたり、学校掃除サポーター制度を立ち上げ、ダスキン本部のみの活動ではなく、本部と全国の加盟店とが連携 し、地域により密着した活動を行っている。また、教員や児童・生徒に有益なプログラムの提供ができるよう講師育成に力を入れており、講師認定後も更新制度 をとり、常に質の高い教育支援活動をめざしている。

 

参加者からの声(アンケートより抜粋)

  • ・教科以外のコンテンツの活用方法について参考になった。
  • ・子ども達の世代だからこそ、掃除が大切なテーマであると考えさせられた。
  • ・講師の育成、展開の体制作りなど、非常に参考になった。
  • ・日頃の教育活動において感じていた課題について、ずばりご指摘いただいたと感じた。

第3部:特別講演

「学びを変える“ビデオ予習型授業”について」

藤原 和博 氏(教育改革家、元杉並区立和田中学校校長)

今、私たちが生きている「超成熟社会」の特徴、子どもたちが活躍するために必要な力について明快に提示いただきました。日本の初等中等教育でも、試験的な 取り組みが進みつつある「反転授業」のバックボーン、つまり、学びが「個別化」していく本質的な意味を捉えなおす機会となったご講演でした。

参加者は、ワークショップでの他者とのインタラクションや藤原氏の投げかけを通し、「それぞれ一人ひとり」の考えを大切にする教育の必要性や方法論を体感 することで、これから求められる学びについて具体的なイメージを持つことができ、藤原様のお話に終始大きく頷いていました。

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ご講演内容

●“みんな一緒”の情報処理力の時代から、”それぞれ一人ひとり”の情報編集力の時代へ

20世紀の「成長社会」では、早く正解を導く”情報処理力”が必要とされており、日本人もその力を存分に発揮してきた。しかし、1997年以降、経済成長 が止まった後の一つの正解のない「超成熟社会」では、様々なものが多様化・複雑化し、変化のスピードも加速、国際的な競争も激化しており、自分の頭で考 え、多様な知識や視点から、人と違ったアイディアを組み立てていける”情報編集力”が必要とされるようになった。そこで導き出される答えは一つではなく、 必然的に「納得解」となる。ただ、今日の日本の教育界では、未だに“情報処理力”が問われる「正解主義」的な学習内容が多く、子どもたちは「分からないか ら答えない」「間違えたら困る」といった姿勢のままである。

その原因は、教員だけでなく、日本の大人が「正解主義」から抜け出せていないことにある。お互いの脳と脳をつないで拡張し、一人では出せないより良い納得 解を導くために、学び合おうとする態度である。一方日本では、本来間違いなどない問いに対しても、教室での子どもたちと同じように、一つの答えを探そうと する大人が多い。このままでは、日本の教育はいつまでも変わらないだろう。

 

●ジグソーパズル型ではなく、レゴR型学力を

日本の教育が「正解主義」から脱却し、これからの社会を生きる子どもたちを育てるためには、最初から一つのビジョンやゴールが示されているパズルのよう に、正しいピースをはめ込む学びの積み重ねではなく、アイディア一つで自由に考えを広げたり変化させたりことができる、レゴブロックRのような学力観が必 要となる。

その学力観において重要になるのが「学びの個別化」である。これまでの一斉型の授業は「正解主義」の学習形態としては価値があったかもしれないが、今は一 人ひとりの考えをいかに活かし、つなげるかが重要である。その実現のためには、ICTなどの技術の活用が最も効果的、効率的だと言える。例えば、一般的に 「反転授業」、英語では「Flipped Classroom」と言われ、主に高等教育の場で成果を上げている教育手法があるが、ビデオで事前に教え方の上手な先生によるレクチャ―を見て、学習内 容について予習し、学校では、他者との協働作業や話し合いなど、学校でなければできないことを行い、自分の考えを他者とつなげることに重きをおくことがで きる。日本では武雄市での取組みが先例だが、現在の社会の変化のスピードから、10年後、20年後には、このやり方が一般化するのではないかと思われる。

企業のCSRや教育支援活動においても、これからの企業活動を担う次世代を育成することをねらいとし、ぜひ今後はこの”情報編集力”を育成するためのプログラムや教材の開発に協力することが求められるだろう。

 

参加者からの声(アンケートより抜粋)

  • ・これからの教育が進むであろう方向性へのヒントを得られた。
  • ・大変刺激的な内容で、目から何度もウロコが落ちた。
  • ・ビデオ予習型授業は合理的で興味深く、教育効果がどうなるか知りたい。
  • ・レゴR型学習を取り入れたい。
  • ・一般企業でも参考になる内容で惹きつけられた。
  • ・一人の教員として思い悩んでいたことへの突破口のヒントを得ることができた。

教育CSRフォーラム2014 アンケート集計結果

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参加者からの声(アンケートより抜粋)

  • ・トータルバランスの良いフォーラムだった。
  • ・講演や事例発表はもちろん、登壇者や参加者と交流もでき、満足した。
  • ・企業が真剣に教育支援に取り組んでいることがよくわかった。
  • ・他社の具体的な事例を通し、自社の取組みをふりかえることができた。
  • ・様々な視点で教育について考えることができ大変よかった。
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